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2024年7月30日

栃木しっぽの会における動物虐待と多頭飼育崩壊への対応についての公開質問状 テキスト全文

栃木県動物愛護指導センター 御中

 

 昨年9月、貴所の譲渡登録団体だった栃木しっぽの会における保護動物へのネグレクトと多頭飼育崩壊が発覚しました。当時、犬、猫、やぎなど150頭以上もの動物を不適切な状態で飼育していたことが判明し、多くの人々が憂慮する事態となりました。

 

 貴所が、動物取扱業の届出すらなかった当該団体に対し、現地の環境や運営状況などあらゆる確認を怠り、収容動物の粗慢な譲渡を長年に渡り繰り返したことが、多頭飼育崩壊及び動物虐待を招く一因となったことは否定できません。

 

 数年前より、栃木県動物愛護指導センター担当者様との話し合いにおいて、栃木しっぽの会への収容犬譲渡を停止していただきますよう、直接要望し、飼育頭数の過多と崩壊の危険性について警鐘を鳴らしてまいりましたが、事態が変わることはありませんでした。本来であれば、法律や条例に基づき動物の適正飼養を指導する立場であるはずの行政が、その業務をおろそかにしてきた責任は大きいと考えております。

 

 この多頭飼育崩壊を一つの具体的事例として、その原因を追求し、解決に向けた取組みや課題を広く世間に共有することで、今後、動物行政全般の体質・体制改善や、保護活動者による不適切飼育や多頭飼育崩壊の再発防止に繋げていきたいと考えております。

 

 このような経緯から、貴所の栃木しっぽの会に対しての見解・指導・対応等に関する疑問点について、私共の請求により開示された公文書をもとに、公開質問状という形式でお尋ねする次第です。

 

 ご多端の折恐縮ですが、下記期限を目途としてご回答いただけますよう、お願い申し上げます。なお、この質問状は回答も含め、関係各所、報道、SNS等に公開とさせて頂きますことをお含みおき下さい。

1.多頭飼育崩壊発覚(2023年9月23日)以前の対応について

 

栃木動物愛護指導センターでは、新しい飼い主への譲渡を仲介することを目的として、申請のあった団体・ボランティアグループ・個人などを譲渡登録団体等として登録し、収容動物を譲渡しています。

 

栃木しっぽの会は、平成27(2015)年6月26日に譲渡登録団体となり、その後、平成30(2018)年6月26日、令和3(2021)年6月28日の2度にわたり、登録の更新を許可されています。

 

この時発行された登録証(※資料1)に記載されている、当該団体の「譲渡可能動物種及び頭数」、及び、私共の請求により開示された公文書記録にて確認した、当該団体に「実際に譲渡された収容犬の頭数」を下記の表にまとめました。

各登録期間にセンターから栃木しっぽの会に引き渡された収容犬の頭数は、記載の譲渡可能頭数を大幅に超えており、その総数は、約8年間で【1,266頭】にものぼります。

このうち、譲渡完了報告が提出された頭数は【277頭】、死亡届が提出された頭数は【13頭】でした。

センターが、栃木しっぽの会から個人の預かりボランティアや他団体へ即時引き渡すことを前提に譲渡したとされる【554頭】を差し引いた頭数は、【712頭】となります。しかし、この「預かりボランティア」には代表の家族も含まれていたため、実際にはこれより多くの犬が、栃木しっぽの会のシェルターへ引き取られました。

 

多頭飼育崩壊発覚時、シェルターに残っていた犬は約130頭(代表が自ら捕獲・一般の飼い主から引き取った犬も含む)とみられます。

 

上記の事実を総合すると、およそ【600頭】もの犬が所在不明となっています。

質問1.登録証に記載の「頭数」の定義と、登録時及び登録更新時、上記頭数を設定・許可した根拠を、それぞれ提示してください。また、「換算」とはどのような計算式なのか、最大数の例をもって説明してください。
 

質問2.どの登録期間においても、譲渡頭数が登録証に記載の頭数を大幅に超えているのはなぜですか。直近の令和3~5年度の期間だけを見ても、犬413頭を譲渡しています。どのような理由・根拠をもって、この頭数の犬を譲渡可能と判断したのですか。

令和3(2021)年3月15日、当会の構成団体より、栃木しっぽの会の不適切な飼育状況について情報提供と問題提起を行いました。

 

この時のやりとりについて、センターが作成した記録書(※資料2)には、「当該団体の収容施設は収容頭数が限界であると認識しているので、当該団体の収容施設に入る譲渡は行っていない。譲渡先の預かりが確定している場合のみ譲渡を行っている。」「今後、改めて飼養状況の確認を行う。」と記録されています。

 

しかし実際には、同年6月、現地視察や預かり先の確認等も行われることなく登録は更新され、以降もセンターから当該団体の収容施設へ、少なくとも132頭の収容犬が譲渡されています。栃木しっぽの会からレスキューされた犬たちのうち数頭が、この期間に引き渡された犬と同一個体であることを確認しています。(資料3)

質問3.いつ、どのような経緯で、「当該団体の収容施設は収容頭数が限界である」と認識したのですか。

質問4.質問3.の認識があり、かつ、当会構成団体及び個人ボランティアから、複数回に渡り写真・動画を含む情報提供や注意喚起があったにも関わらず、約8年に渡る登録期間中、当該団体に対し飼育環境・頭数・人員・運営状況等の確認や現地視察を一切行わないまま、登録証に記載されている譲渡可能頭数を大幅に増やしたり、収容動物を譲渡し続けたのはなぜですか。理由を明確にお答えください。

栃木しっぽの会を含む譲渡登録団体等への収容動物の譲渡は、一般の飼い主へ犬猫の譲渡しが行われることを前提としています。このことに加え、取扱動物種、頭数、繰り返し動物を譲渡していた事実等を鑑みれば、当該団体は第一種もしくは第二種動物取扱業の規制対象であることは明白です。

質問5.栃木しっぽの会は、第一種・第二種動物取扱業のいずれも取得せず、無登録・未届の状態で運営していました。センターはこの事実を認識していたにも関わらず、届出を指導しなかったのはなぜですか。

2.多頭飼育崩壊発覚(2023年9月23日)以降の対応について

 

令和5(2023)年9月23日、当該団体の状況を危惧した有志ボランティアによる立入調査と、緊急レスキューが行われました。当日の現地写真・動画を資料として添付いたしましたので、ご覧ください。(資料4及び添付のUSBメモリ)

質問6.当時の施設内の状況(飼育状況の適否、施設の衛生環境、犬の健康状態等)について、貴所の見解を詳細にお聞かせください。

この2日後の令和5(2023)年9月25日、センターが初めて現地視察を行いました。この時点で、現地には少なくとも100頭を超える動物が残されていたことを確認しています。(センター職員との会話録音あり)

 

しかし、開示された公文書(資料5)によれば、立入ができなかった敷地・建物があり、「犬の頭数や飼育状況について十分な確認ができなかった」としているにも関わらず、「健康上問題がある犬や、飼育環境の衛生状態が良くないことは確認できなかった」と記録されています。

質問7.犬の健康状態や、飼育環境の衛生状態の是非について、何を基準に、どのような調査や根拠に基づいて上記の判断をしたのか、その手段や担当者の資格等も交えて、具体的かつ詳細に説明してください。

環境省発行の「動物虐待等に関する対応ガイドライン」によれば、動物虐待事案=警察、動物虐待事案につながる不適正飼養・虐待を受けるおそれがある事態=行政という明確な線引きは困難とし、行政・警察による情報共有と事案に応じた両機関の連携が勧められています。しかし、本事案について、センターは警察への相談・情報共有を行いませんでした。

質問8.警察への通報・相談・情報提供を行わなかったのはなぜですか。その必要性がないと判断した理由を説明してください。

当初、栃木しっぽの会が飼育していた犬およそ120頭の狂犬病予防接種について、多くが未接種であったことを確認しています。(林代表との会話音声録音あり)

質問9.栃木県動物愛護センターは未接種の事実をいつ、どのように把握したのか、お答えください。

質問10.令和5(2023)年12月28日、センターから当該団体に対し発行された「動物適正飼養指導票」によれば、「生後91日以上の犬について、狂犬病の予防注射を受けること」としていますが、接種確認の方法(書面、口頭等)と全頭の接種確認ができた日付を教えてください。

栃木しっぽの会のシェルター内では、不避妊のメス犬と未去勢のオス犬が、同じ室内で飼育され、繁殖管理がされていなかった事を確認しています。繁殖制限(不妊去勢手術の実施)は犬の飼い主の義務と責任であるとして、センターが発行する適正飼養の普及啓発に係る文書やチラシ等にも記載されています。

質問11.栃木県動物愛護センターは未接種の事実をいつ、どのように把握したのか、お答えください。

3.指導について

 

当該団体への指導内容と経過についてお伺いします。

質問12.2023年9月25日以降、訪問指導を行っているとの事ですが、指導回数、日程、及び各回の指導内容や行った作業について具体的にお答えください。上記の指導等により、適正な状態に是正されたと思われる事項と、確認の方法、その日付をお答えください。

質問13.上記の指導等により、適正な状態に是正されたと思われる事項と、確認の方法、その日付をお答えください。

以下につきましては、2024年8年1日時点での数字をお答え下さい。

  1. センターによる初回訪問(2023年9月25日)から現在まで、各訪問指導時の犬の頭数の推移

  2. 1.のうち、避妊・去勢済であることを、書面での証拠(担当獣医師によるカルテ、明細書、領収書等)をもとに確認できている犬の頭数

※1. 2.について、センターによる初回確認時点で、林代表個人のペットとして畜犬登録済だった個体を除く

4.今後について

 

栃木しっぽの会に残されている犬の頭数について、センターは個人情報であるとして非開示としているため、はっきりとした数は不明ですが、私共の調査によれば、少なくとも70頭ほどが残されていると思われます。

 

これまで、数々の保護団体・ボランティアが飼育環境の整備、不妊手術、譲渡等の協力を申し入れましたが、林代表は自身が「多頭飼育崩壊に陥っている」という認識はなく、そのどれも受け入れることはありませんでした。

 

2023年10月初旬、栃木県の動物愛護団体が「事態を収束させる」として、現地に残る犬・猫全頭の所有権を得て、犬舎の建設・不妊去勢手術等を実施し、飼育を継続していくと両者から発表がありました。これにより、長期的な問題解決を見据え、林代表と直接交渉・説得を続けていた数団体も、介入ができない状態となりました。

 

しかし、私共への情報提供によれば、所有権の移転を含め、両者の協力体制は解消されたとのことです。林代表は後に当該記事を削除しており、その後の報告はなく、シェルターの環境や中の動物の状態は一切わからない状態です。栃木しっぽの会の多頭飼育崩壊は、林代表とその家族しか運営に関わる者がおらず、シェルターが非常に閉鎖的で不透明だったことも大きな原因の一つであり、これでは元の木阿弥です。

 

全頭の動物を林代表とその家族のみで適正に管理飼育し、福祉(QOL)を守っていくことは、非常に難しいと考えます。アニマルホーダーは終生に亘り、監督、管理体制のもとに置かなければ、動物を取り上げたとしてもほぼ全員が同じ事を繰り返すからです。

 

これ以上の犠牲を防ぐため、シェルターが適正な状態で運営されているのか、第三者機関により継続的に確認・管理を行う必要があると考えます。

1,800万円を超える多額の寄付金を募っていた経緯からも、当該団体及びその活動を容認していたセンターは、公に説明責任を果たしていくべきです。

質問14.今後、動物たちの命の安全を確保し、適正な飼育頭数に減らすためには、他者の協力が必要不可欠です。また、動物愛護管理法の飼養管理基準(数値規制)の観点からも、人員不足の現状を改善させる必要があると考えますが、この点について、今後どのような指導をされ、どのように是正されるのかお答えください。その他、具体的な改善策・提案がありましたら、お聞かせください。

動物行政の体質・体制改善を求める会 構成団体・ボランティア

 

主催

ワンフォーライツカマクラ 代表 小松和香子

メロードッグレスキュー 代表 髙橋美織


賛同団体(五十音順)

認定NPO法人 アニマルライツセンター 代表理事 岡田千尋

NPO法人アルマ 理事長 竹本由実子

東京わんにゃんシェルター&アダプション 代表 大野真由子

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