殺処分削減によるリスクへの対策について【動物行政に求めること】
- stophoukai2023
- 2024年1月1日
- 読了時間: 4分
「殺処分ゼロ」を掲げる自治体が増えているのは、動物愛護の観点からは歓迎すべき傾向です。
しかし、実際には多くの課題が残されており、その裏側にも目を向ける必要があります。
特に収容頭数が多い地域においては、具体的な対策がないままに殺処分廃止を推し進めることで、大きく分けて以下の二つのリスクがあると考えています。
1.過剰収容による、動物福祉の低下
過剰な数の動物を抱え込むことにより、施設や人員の許容量を超え、飼育環境の悪化を招いたり、管理が行き届かなくなり、収容動物に対し適切なケアを行うことが難しくなるケースもあります。
例えば、十分なスペースが確保できず、ストレスによる喧嘩や感染症のリスクが高まったり、各個体に割ける人員や時間がなくなり、健康状態や譲渡適正の把握も難しくなります。
収容動物であっても、動愛法に定められた基準に基づき、適切な環境で過ごせるよう努めるべきです。
2.収容数・殺処分数を減らすことを目的とした、ばらまき譲渡
収容数や殺処分数の削減に繋げるため、譲渡先の十分な適正審査や確認がないままに収容動物が引き渡されることにより、下記のような問題が起こっています。
▶一般の譲渡希望者への譲渡の場合
不適切な環境での飼育、虐待や放棄のリスクが高まる他、飼いきれなくなった犬が再び放棄され、保護される「二次レスキュー」が後を絶たないという現状があります。
▶保護活動者・ボランティアへの譲渡の場合
多くの自治体では、新しい飼い主への譲渡仲介を目的として、保護団体やボランティアが、講習の受講や申請書類の提出による登録を行い、収容動物の譲渡を受けることが可能となっています。
しかし、これは登録者に十分な飼育知識や経験があることの証明になるとは限らず、不適切な環境での飼育や、自身のキャパシティを超えて次々と収容動物を引き取ることで多頭飼育崩壊を起こす例も少なくありません。
保護動物の中でも特に、人馴れしていない野犬や、多頭飼育崩壊・ネグレクトからレスキューされた犬猫が本来のQOL(質の高い生活)を取り戻すには、より専門的な知識や高度な医療・ケアが必要になります。
登録時の譲渡適正審査や飼育環境の確認、基準の明確化など、行政の管理・監視の目が行き届くようにするための改善策が求められます。
栃木県も野犬をはじめ収容される動物の数が非常に多い地域であり、上記の課題に直面しています。
近年は殺処分の大幅な減少を公表していましたが、その成果の中心には、栃木しっぽの会の存在がありました。多くの動物が殺処分からは逃れた一方で、同会に引き渡された後、何年も狭いケージに閉じ込められ、飢え、やせ細り、治療もされず、ただ痛みや苦しみに耐えるだけの長い時間を過ごすことになったのです。
崩壊を受けて、栃木県は、2025年度より県外の保護団体・ボランティアへの譲渡登録を許可・開始しました。
これは、県内の譲渡登録団体・ボランティアに負担が集中しないよう配慮した取り組みと考えられますが、改正内容をみれば、十分な検討がなされたとは言い難く、安易な対応と言わざるを得ません。
この点については、引き続き慎重に検証し、改善を求めていく必要があると考えています。
譲渡を行うことで、行政における殺処分の数は減り、数字の上では大きな功績とされます。しかし、殺処分を免れるからといって、その動物が本来の姿で生きる権利を奪ってよいわけではありません。
命を単なる「数字の1」として扱うのではなく、尊重されるべき存在として、一頭一頭の譲渡に責任を持つことが大切です。
真に意味のある「殺処分ゼロ」とは、ただ数字を追うだけでなく、動物たちが心身ともに健やかに暮らせる社会や環境を整えることにあるのではないでしょうか。
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